作業環境測定の目的

作業環境中に有害物質が存在する場合には、その有害物を除去するか低減させるか、又はこれらの対策だけでは有害な因子への労働者のばく露を十分な程度まで低減させることができない場合には、個人用保護具によるばく露防止のための手段を利用すること等によって、労働者の健康障害を未然に防止することが必要です。対策を講じ、この対策が有効であるかどうかを定期的に、又は必要に応じて見直して、必要がある場合にはこの対策を改善することが、作業環境測定の目的です。

作業環境中にこれらの有害な因子がどの程度存在し、その作業環境で働く労働者がこれらの有害な因子にどの程度さらされているのかをは握しなければなりません。この把握をすることを広い意味で作業環境測定といっています。

測定すべき事業所は?

作業環境測定機関が定期的な測定を義務づけられているのは労働安全衛生法第65条により、以下の6事業所になります。

その他、5事業所は事業所様自身でも測定が可能となります。測定方法や測定間隔など、不明な点があれば、お問い合わせください。また、測定のご依頼も受け付けております。

デザインとは?単位作業場所の設定

図面などから、作業環境管理の対象となる区域、有害物質の分布状況や作業者の行動範囲などを考えて、測定計画を立案します。作業場で扱っている材料より測定対象有害物を決めます。単位作業場を作業場周辺における有害物の分布及び作業員の行動 範囲より決定し、対象有害物より測定方法・器具を決定します。

測定点の設定

A測定とは、空気中の有害物質濃度の空間的・時間的変動の平均的な状態を把握するために行います。6m以内の等間隔で5点以上測定します。
B測定とは、作業者の暴露が最大と考えられる場所と時間で測定します。測定士の判断に委ねられます。通常1点ですが、2点以上測定し濃度の大きい値を選択する場合もあります。

測定

各測定点において対象物質に応じた測定方法で対象物質を採取します。多くがポンプで事業場の空気を吸引し、持ち帰り分析します。採取する高さは50~150cm(人の呼吸域(座位、立位))と決まっていますので、三脚を立てて、1測定点につき、10分~20分程、採取します。

個人サンプリング法

2021年4月1日から作業環境測定の手法に「個人サンプリング法」という新しいデザイン・サンプリングの手法が追加されました。従来の方法とは異なり、対象作業に従事する労働者に試料採取に必要な機器を装着していただき、測定を実施します。なお、個人サンプリング法が選択できる対象作業場所等は下記の物質や作業に限られ、該当の事業所様のほうで従来通りの測定か個人サンプリング法か、いずれかを選択していただきます。

分析・評価

A測定、B測定ともに取り扱い物質の管理濃度と比較します。

管理濃度とは?

作業環境管理を進める上で、有害物質に関する作業環境の状態を評価するために、作業環境測定基準に従って実施した作業環境測定の結果から作業環境管理の良否を判断する際の管理区分を決定するための指標になります。似たような名前で許容濃度とありますが、これは労働者が1日8時間、1週間40時間程度、肉体的に激しくない労働強度で有害物質に暴露される場合に、当該有害物質の平均暴露濃度がこの数値以下であれば、ほとんどすべての労働者に健康上の悪い影響が見られないと判断される濃度になります。作業環境測定(個人サンプリング法も)は管理濃度が基準となります。

各物質の管理濃度はこちらから。

粉じん・有機溶剤・特定化学物質の評価

対象物質の管理濃度より低ければ第Ⅰ管理区分となり、現状の維持が求められます。

一方、A測定の平均値が管理濃度を超えるもしくはB測定の値が管理濃度の1.5倍を超えると「第Ⅲ管理区分」となり、作業環境の改善が求められます。まずは保護具を作業者に支給し、使用することと健康診断の実施が求められます。また、作業環境の改善をした場合はもう一度、作業環境測定を行い、その効果を判定することが求められます。

第Ⅱ管理区分は両者の中間になりますが、極力、第Ⅰ管理区分に近づくよう、局所排気装置の点検、作業方法の検討など、より良い環境にするために現状の再確認し、対応することが望まれます。

騒音の評価

騒音は基準値が85db、90dbの2つあります。A測定の平均値およびB測定値が85dbを下回れば、第Ⅰ管理区分となります。A測定値もしくはB測定値の一方でも85db~90dbの場合、「第Ⅱ管理区分」、同じく、90db以上の場合は「第Ⅲ管理区分」となります。各管理区分のその後の対応は上記のイラストと同じになります。