2016年6月に化学物質のリスクアセスメントの実施が義務化されました。しかし、中小零細事業場において独自に化学物質管理を行っている事業場は多くありません。国のリスク評価により特定化学物質障害予防規則等への追加が決まると、当該物質の使用をやめて、危険性・有害性を十分確認・評価せずに規制対象外の物質を代替品として使用し、その結果、十分な対策が取られずに労働災害が発生している傾向があります。一般的には安全衛生の管理はトップダウン形式により行われますが、そもそも化学物質に関する知識や管理を考える人材が中小零細職場にはいないことが少なくありません。そこで、我々は労働者らが自ら自職場の問題点について考え,改善内容を提案するボトムアップ方式により、職場の労働衛生の文化を醸成できると考えています。

改善例

ジクロロメタンの取り扱い改善

  • 金属製品の洗浄作業にジクロロメタンを使用。取り扱いは10㎡と狭い部屋で局所排気装置なし。短時間作業のため、防毒マスク使用せず
  • 作業環境測定を初めて実施した際、第3管理区分(数百ppm検出(管理濃度50ppm))
  • 局所排気装置の設置を検討するも予算上すぐの実施は難しく、以下の改善を実施
  • 改善①ジクロロメタンを大量に消費する大型の金属片の洗浄は外注に移行
  • 改善②有機溶剤作業主任者が中心となって代替製品の検討
  • 改善③作業者を含め、ジクロロメタンの揮発を少しでも少なくする作業手順の検討

塗装ブースの風量改善

  • 改善前、塗装ブースの開口部の風量は十分
  • しかし、塗装する物によってはブースから距離が離れて、作業する位置の制御風速が0.2m/秒と不足(0.4m/秒以上が必要)
  • 衛生コンサルタントが以下2つをアドバイス
  • 改善①塗装ブースに囲いを設置
  • 改善②プッシュプル方式とし、作業場全体の風速を確保

ドラフトの使用方法改善

  • クロロホルムをドラフトで使用する事業所
  • ドラフトの窓を風量が確保できる位置まで下げずに使用し、管理濃度を超えることも
  • 改善①従業員50名以下だが、安全衛生委員会を月1回開催
  • 改善②事業場内の化学物質使用状況の調査し、ドラフトの窓の下げる位置を明確に表示

弗化水素投入場の改善

  • 月数回の作業で一回につき、100Lの弗化水素をポリタンクからタンクへ投入
  • 上方吸引型の局所排気装置で開口面こそ十分な風量だが、投入口の制御風速は0.2m/秒と不足(1.0m/秒以上が必要)
  • 改善①投入口の開口部を簡易な蓋で塞ぐ
  • 改善②開口面の風速は十分であったため、投入口近くまでダクトを延長