アスベストの被害
アスベスト(石綿)の被害が増え続けています。アスベストで発症するとされる悪性腫瘍である中皮腫の日本国内の死亡者は、2018年には年間1,512人に達しています。またWHOは全世界のアスベストによる死亡者を年間22万人と推定しています。
アスベストは、過去に建材を中心に大量に使用されました。身の回りに残されていて、どこにでもある強力な発がん物質です。建物の解体や改修のときに不用意に扱うことによって発がん物質が発生することが懸念されています。これまでの使用によって、現実に大きな被害を出しており、これからも被害が増え続けることが予想されています。アスベストは容易に発じんして目に見えず、自覚なくばく露し、職域だけでなく周囲の人々に被害をもたらします。また、病気の潜伏期間がきわめて長いなどの独特な特徴があります。職業上のリスクとなる有害物質はたくさんありますが、アスベストのような物質は他にはありません。
職場や近隣の住民・利用者とアスベストのリスクを考える
私たちは、東日本大震災被災地のアスベスト対策を進める活動に取り組みました。東日本大震災では地震と津波によって多くの人命が奪われると同時にたくさんの建物も被害を受けました。建物に大量に残されたアスベスト含有建材が一度に被災したことによって、その後の復旧・復興の過程でアスベストが飛散し、作業に従事する労働者、周辺住民やボランティアがアスベストの粉じんを吸ってしまう(ばく露)状況がありました。「建物にはアスベストはもうないはずだ」、「スレート板は非飛散性アスベストだから飛散しない」、「すこしくらいは吸っても大丈夫」、また逆に「ちょっとでも吸うとがんになる」などの誤解があり、適切な対策がとられていない場面が多くみられました。
アスベストのばく露を防止するためには被害を受けるおそれのある人々が対策に参加することが重要です。これは職場では「リスクアセスメント」と呼ばれており、世界中で行われていますが、日本の中小の解体の現場では未だ普及していません。アスベストの被害は職場を超えて周辺住民と建物を利用する人々に及びます。住民、建物利用者、建物所有者、工事業者、行政などの関係者が情報を共有し、対策に関与することをリスクコミュニケーションと呼びます。アスベストの対策では、このリスクコミュニケーションが効果的であり、重要とされています。私たちは全国各地で解体工事などでのアスベストをめぐるリスクコミュニケーションに関わってきました。
ガイドブック・リスクコミュニケーションの事例集
その成果として、ガイドブックを発刊しました。アスベストとは何か、その用途と危険性について解説します。そしてその危険を避けるために働く人や建物利用者と住民が何をすればいいのかを示すために作成しました。皆さんの問題解決のために役立てば幸いです。
市民のためのアスベストガイド
また、2017年から18年の成果として「アスベスト・リスクコミュニケーション事例集」を作成しました。築地市場の解体工事をはじめとする最新の事例を掲載しました。
ワークショップなど
地球環境基金の助成金により、各地でのワークショップを開催すると共に、実際の解体と石綿の除去の現場でのリスクコミュニケーションを実施しています。