じん肺(塵肺): 粉じんを吸い込むことによって引き起こされる職業病
じん肺は粉じんを吸い込むことによって引き起こされる職業病です。じん肺は最古の職業病のひとつで、今でも毎年200~300名がじん肺及びじん肺の合併症として労災認定されています。
じん肺の原因になる粉じんはいろいろあります。鉱物や金属、研磨剤、炭素原料、アーク溶接のヒューム(金属の粒子状物質)等を吸い込むと、大きな粉じんは、鼻毛で濾過され、気管支まで入っても気管支の壁にある細かい毛(繊毛)が粉じんを外に送り出したり、痰と一緒に外に出したりしますが、微細な粉じんほど肺の奥深くまで入り込みます。長年、粉じんを吸い込むと、肺胞に沈着した粉じんが肺の線維増殖を起こし、肺の組織を固く変化させます。その結果、肺の機能が低下し、呼吸困難になるのがじん肺です。
じん肺が多く発生している業種では、炭鉱、金属鉱山等の鉱業、金属製品、鋳物、土石製品、ガラス等の製造業、トンネル建設やそれ以外の建設業があります。近年では建設業に従事し石綿(アスベスト)粉じんを吸った労働者等に石綿肺、中皮腫、肺がんが多発しています。
じん肺の初期は、あまり自覚症状はでません。自覚症状がないからとは安心できず、早期発見のためにも健康診断が不可欠です。少しずつ、風邪をひきやすい、ひくと治りにくい等の状況が現れ始めます。進んでくると、咳、痰、息切れ、胸苦しさ、胸の中でゼーゼー、ヒューヒュー音がする。呼吸困難などの症状が出てきます。息切れも最初は坂道や階段の昇り降りだけだったのが、平地を歩いていてもつらい、人と話をしていても息が切れるようになります。
じん肺法(1960年)はじん肺の予防と健康管理等の措置が定められています。じん肺法では、事業者は粉じん作業に従事する労働者にじん肺健康診断を実施し、国がじん肺管理区分を決定します。じん肺管理区分により、国は事業者に粉じん作業の転換を勧奨又は指示するとともに、労働者は離職後も健康管理と労災補償が受けられます。
じん肺管理区分4及びじん肺管理区分2、3イ・ロで合併症にり患している者は労災保険により療養することができます。じん肺の合併症には、①肺結核、②結核性胸膜炎、③続発性気胸、④続発性気管支炎、⑤続発性気管支炎、⑥原発性肺がんが指定されています。
咳や痰、息切れ、呼吸困難等で通院治療していても、適切な診断やアドバイスを受けて、じん肺法令に基づく健康管理や労災補償を受けていない方が少なくありません。過去に粉じん作業に従事した職歴をお持ちの方であれば、じん肺診療の専門医に相談、受診されることをお勧めします。